著者: 乙一
僕と森野夜はクラスメイト。たまにしかことばを交わさないけれども、話すときの話題は異常な事件や、人の死についての話題。ある日、森野が拾った手帳には、世間を騒がせている猟奇殺人事件の克明な記録がされていた。手帳に記された内容を元に、僕と森野はまだ発見されていない新しい犠牲者の元へ向かった──。
著者最初の単行本であった。「暗黒系」「リストカット事件」の二作のみザ・スニーカー誌に掲載され、他四篇は書き下ろし。単行本では六作で一冊だったが、文庫化に当たって作品が並べ替えられ上下巻構成となった。
「僕」と「森野夜」の二人がメイン登場人物。文庫版の前半三篇では「僕」の視点を中心に森野夜の姿を描き、後半三篇では事件の関係者の目から「僕」の姿が描かれる。
文章中にいろいろと目眩しを置きながら、意外な結末へつながっていくあたりは本格ミステリ大賞をとるだけある、と思う。見事にだまされつつ、なるほどと思ったり。
猟奇な描写全面拒否な人は受け付けないだろうとは思うけれど、猟奇を描きたいだけの作品とは思えず、そのあたりはやっぱり乙一らしさ、なんだろうなと思う。