著者: 仁木健
イラストレータ: 椋本夏夜
レーベル: 角川スニーカー文庫
2007年に地球に飛来した隕石に含まれていたウィルスで、僅か8年で人類の半分が死滅してから約70年。激減した人類を支えるべく生み出されたアンドロイド「無機人」を巡って世界は二つに別れていた。無機人に人権を認める「メカニズム国家」と、認めない「ヒューマニズム国家」の二つに。
東欧の小国・ラトリアは3年前に統合されてできた国だったが、ヒューマニズム国家であった東ラトリアの残党が蜂起、再び東半分を実効支配下に置いていた。その東ラトリアで消息を絶った天才科学者兄妹を捜索すべく、日本政府は僅か14歳のエージェント・ミナヅキ=コウを派遣した。
過去の事件で全身を機械化した人間であるコウと無機人でコウのパートナーのミナは、旧東ラトリア軍で兵器として育てられ感情を失った少女アイリスと共に東ラトリアに潜入する―
ヒューマニズムに対するカリカルチュアに満ちた作品、にしたかったのでしょうがかなり滑っています。前作の「マテリアル・クライシス」もそうなのですが、登場人物たちが深く大きな傷を心身両面に負っていて、精神的にねじくれ曲がってしまっているため、潤いがないことこの上ありません。前作ではそれでも松永心という癒し系キャラがいたので救われていたのですが、今作ではそれに当たる人物がいないために、登場人物たちはひたすら自責し自傷してしまっています。しかも殆ど共感を得ない方向で。
とりあえずアイリスの変化を楽しむのが読み方だとは思いますが、筆力が追い付いていないので楽しむことはかなり難しいでしょう。
二巻も出たことは出たんですが……読みにくさは相変わらず。滑りっぱなし、の感が拭えません。ぶっちゃけ、「マテリアル・クライシスの方がマシ」、です。
完結しています。