著者: 桜庭一樹
山野内荒野(12)は中学校の入学式の朝の電車の中で、見知らぬ男の子に助けられる。ところがその子は同じ中学の同じクラスの秀才少年で、“氷の神無月”と呼ばれていた。荒野が胸のドキドキを憶えた少年・神無月悠也は、しかし何やら荒野を避けている様子。
“恋愛小説家”の父・山野内正慶と家政婦の奈々子さん、友人になった田中江里華、湯川麻美たちが取り巻くなか、荒野と荒野の周りの恋模様はクルクルと回る万華鏡。
切なくて酸っぱくてほろ苦くて青々しい少年少女たちの恋物語。
コバルト系とはまた違った、酸っぱさ成分多目の恋愛小説で、いかにも桜庭一樹といった雰囲気。“大人になるってこういうことだよなー”って感じの、誰もが通り過ぎてきた一瞬を思い出させる良作です。
完結編となる第三部は単行本『荒野』に収録されています。