著者: 桜庭一樹
レーベル: 東京創元社ミステリ・フロンティア
大西葵は13歳。瀬戸内の島に住む、中学二年生。母と、義父の三人暮らし。
それなりに小さな問題を抱える生活の中で、澱のように、昏いものが心の奥に溜っていく。発散できない重いものを心の奥に抱え込んで、葵は少しずつ沈んでいく。仲の良かった男の子に彼女ができて、仲良しの女子グループは夏休みでバラバラに。そして葵の隣には、宮乃下静香がいた。
心に澱を溜め込んだ二人が出会い、そして、葵は人を殺した。
夏に一人、冬に一人。
でも殺人者は少女には向かない職業だった。
同じクラスメイトでありながら全くといっていいほど接点がなかった二人の接触から接近、そして夏休み。環境の変化、人間関係の変化、そして少女の成長が、どうしようもないほど痛々しく二人を繋ぎ止め、そして悪意を殺意へと昇華させていきます。
終わった後にこう思う。こんな結末を迎えなくても良い方法があったんじゃないか?
でも、誰の救いの手も伸べられないまま、物語は冬を迎えます。
「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」の切なさが、再び迫ります。