著者: 冴木忍
秩父市山中にある小さな山寺、通称「妖怪寺」は、妖怪や付喪神の駆込み寺。住職の孫の望月蔵人は、時に妖怪を退治し、時に妖怪を誘導し、時に妖怪たちのやらかした事件の後始末をし、と忙しい日々を送っている。
法力を持つ祖父・鳳雲や姉・綾乃に言いつけられるまま、蛇女と人間のハーフである仁巳や、兄が〈鬼〉に憑かれてしまった安曇多輝、妖怪コレクター西荻助左衛門、発火能力を持つ榊和馬、その妹で他人の思考を読める花也らとともに西へ東へ事件の解決に奔走する。
ある意味実に冴木忍らしい作品。「道士リジィオ」の現代伝奇版、という言い方もできるかと思うくらいに、通底するものは近い。派手なアクションではなく、妖怪たち、あるいは人間たちの苦しみや悲しみを描き、そしてそれを解いていくスタイルが特に近い。泣き笑い苦しみ涙する姿は、妖怪も人間もないと思う一方で、強い想いが他者を巻き込んでいく姿は、自戒の念をも抱かせる。
しんみり系のハートフルストーリーズ。作者お気に入りの作品らしいが、あまり人気は出なかったらしいのが残念。
イラストレータ: 田沼雄一郎
レーベル: 富士見ファンタジア文庫
イラストレータ: 田口順子
レーベル: 角川スニーカー文庫