著者: 夏見正隆
ミッドウェー海戦で勝利を收め、有利な条件で対米講和を果たしたものの、戦後の不況から東日本が共産主義国家として独立してしまった日本。
西日本帝国海軍パイロット愛月有理砂中尉は、休暇の最中に突如呼び戻され、空母赤城の艦上へ。なんの説明もないまま対地攻撃フル兵装で東日本へ向かえと命令される。
実戦。
遡ること数時間前。地球は未曾有の危機に直面することになっていた。異星文明の宇宙機を東日本とソビエトの残党が撃ち落としていたのだ。しかしそれは制御不能な宇宙怪獣だった……!
怪獣映画を小説で、というコンセプトなんだそうですが、怪獣小説というよりもこれはディストピア小説。主人公はモチロン東日本共和国を牛耳る東日本平等党委員長・山多田大三。宮殿を築きハーレムに美女を囲い、逆らう奴は粛正し、平等党員は赤い貴族。平等の名のもとに人民から名前を奪い教育を奪い食料を奪い、とにかくやりたい放題。
一方の西日本帝国がじゃあマトモなのかといわれればさに非ず。これまたとんでもない首相が政治に大鉈を振るっていたりする。
それはもう救いようがないばかりに……。
本作の続編である「わたしのファルコン」や、その他夏見作品に登場する様々な人物・ガジェットが初登場する、夏見作品の原点。最後が打ち切りっぽく尻切れ蜻蛉になっていますが、あの独特の雰囲気が好きな人には堪らない作品でしょう。
イラストレータ: 梅津泰臣
レーベル: 徳間文庫
イラストレータ: 鈴木雅久
レーベル: ソノラマノベルス