著者: 冴木忍
イラストレータ: 甘塩コメコ
レーベル: 角川スニーカー文庫
この世に妖魔を解き放った古の大魔道士リュシアンの末裔であるレイスファンは、契約している妖魔ヴァルによって、放浪の賢者ボエルを探す旅をさせられている。リュシアンの末裔であるというだけで、妖魔たちは力に惹かれて次々と襲ってきて、死にたくないので反撃しているうちに“妖魔殺し”と呼ばれるようになり、生来のお人好しもあって、行く先々でトラブルに巻込まれるレイスファン。ヴァルに「根暗」と罵られながらも、今日も放浪の賢者を探す旅は続く。
久しぶりに冴木忍らしい作品と言って良いでしょうか。類型的には「道士リジィオ」シリーズに近いですね。要らん力を押し付けられた好青年が、性格の悪い仲間につきまとわれ突つき回されながらも人助けのつもりで不幸を振りまいて旅の空、という辺りは、冴木節満載です。
物語はまだまだ序盤ですが、既にレイスファンに関った人間がことごとく不幸になるという救いようのなさ、レイスファンの不幸っぷりが楽しめます。
途中かなり描写が省かれている所などがあり、どうも読みづらい。また伏線を張りきれなかったのか、回收しきれなかったのか、多少ならず描ききれていないキャラなどもあり、消化不良感が残った。何分、比較対象が自身の「卵王子」で分の悪さが否めない所ではあるが、自身の最高傑作を超えられなかった作品の一つになってしまった。
全5巻、完結。