著者: 沖原朋美
イラストレータ: 北畠あけ乃
レーベル: コバルト文庫
田舎村の教会オルガン弾きだったミレイラは、オルガニストになるべく、母を故郷を捨て、港町のレイザンヌ教会へ家出同然に転がり込む。ただその胸に、オルガンを弾きたいという、狂わんばかりの情熱を抱いて。
迸る情熱に天性の才能が相まって、ミレイラのオルガンの評判は上がっていく。下宿と教会を往復する毎日の中で、ミレイラはかつて故郷で恋を育んだクリスティアンの姿を見る。しかし16歳となっている筈のクリスの姿は、少女と見紛うばかりだった……。
天才オルガニストと天才オペラ歌手との、音楽に魂を捧げてしまった者同士の恋物語。
クリスの謎は当時の教会音楽についてちょっとでも知識があれば分かっちゃう辺りがアレですが、神に愛された才能の持ち主が必ずしも幸せではないという辺りの描写の丁寧さが、「月のしらべ 銀のみち」と通底します。
近付きたいけど近付けない、ヤマアラシのジレンマを抱えた恋愛劇が沖原朋美らしくてとても良いです。