著者: 麻木未穂
イラストレータ: 倣学
レーベル: トクマ・ノベルズEdge
紀元394年、ローマ帝国。最後の統一ローマ皇帝となるテオドシウス一世の御代。辺境“神狩りの森”で“惑いの魔女”ルヴァーと共に暮らすシフは、見掛けは13歳の少女だったが、既に30歳。18年前故郷アエスティの王宮で犯した罪により呪われ、歳を取らなくなった。そして死の王ヴォータンに狙われる日々。
しかしそんなシフをローマ兵が攫いにやって来る。テオドシウスの妾となった妹ベーダが呼んでいるという。アエスティ族の未来を胸に、王女シフのコンスタンティノポリスへの旅が始まる。
粗筋を書くと真面目っぽい作品のように思える……というか、確かに筋書きは真面目なのですが、シフときたら王家の血を絶やさぬために、見目麗しい男を見れば種付けを要求するという乱暴さ。騎士隊長のレギウスから始まって、金髮ならば殆ど見境なし。
しかし! 出てくる野郎どもがまた木石の如きレギウスから始まって男色家やら異教徒嫌いやらで何故かシフが迫っても嫌がる連中ばかり。
果たしてシフの野望は果たされるのか……。
とまあ、話の筋は重たい割に、登場人物達の軽妙さが功を奏して、読みやすい作品に仕上がっています。
あと、歴史家的な視点からすると、当時のローマは海洋国家なので、陸路より船を使うだろうなぁなどというツッコミや、ジャガイモがヨーロッパに入ってきたのは16cに南米からであってこの時代の主食は麦と豆だよ、などといった無粋なツッコミが沢山できます。