著者: いわなぎ一葉
イラストレータ: AKIRA
レーベル: 富士見ファンタジア文庫
功名心に逸るカルロ・カルネロスは、皇帝に近付かんと宮殿内の神殿に出没する悪霊を退治を目論むが、気がつくと二千年の時を遡り、滅亡した王国、シュラトスに居た。
シュラトスの女王・クリムエラに近付き、登用されることに成功したカルロは、その知識と才能を活かし、滅びの迫る王国を次々と変革していく。鮮やかな手腕を見せる男の評価は上がり、クリムエラとの距離も段々に縮まっていく。しかし距離が縮まるほどに募る不安。いずれカルロは元の時代に戻っていくのではないか―
「史実」であるシュラトス滅亡を防ぐため、二人で共に生きるため、運命との戦いに身を投じる二人。その結末は―
第16回ファンタジア長編小説大賞準入選作。
第一作ということもあってか、伏線の張り方に難があり、また物語全体が「詰め込み過ぎ」の様相を呈していて、決して作品としての完成度は高くない。特にタイムトラベル・ラブストーリは構成が命だけに、伏線の薄さは気になる。ただし、そういった難点に目を瞑らせるほどの押しの強さがあり、今後に期待させられる。
処女作の続編となる第2作「真実の扉、黎明の女王」は、「約束の柱、落日の女王」のエンディング後、最後のハッピーエンドまでを描く。「約束の柱、落日の女王」の終わり方はあれはあれで良いと思ったが、「真実の扉、黎明の女王」まで続けて読むと、一層良い。そういう意味では、巧い繋げ方をしている。
ただ、多少文章表現に不備が見られるので、その点は今後の要改善点となるだろう。