著者: 有川浩
レーベル: メディアワークス
米軍横須賀基地、春の桜祭。一般解放日となるこの日は、例年通り多くの観光客でごった返していた。
その米軍敷地内の隅にある、潜水艦埠頭に係留されている『きりしお』に突如出港命令が下る。しかし出港は叶わず、艦を捨てることに。
敵は……海から陸へと続々と上陸する、体長3mにもなる巨大ザリガニの大群だった。逃げ惑う群集に襲いかかるエビ。『きりしお』乗組員夏木大和三尉と冬原晴臣三尉は待避途中に民間人を発見し、艦長と共に救出に向かい……潜水艦に閉じこめられる。13人の子供たちと共に。
一方、陸上では遅々として出ない陸上自衛隊への出動の前に、県警機動隊が決死の抵抗を繰り広げていた……。
有川浩の「自衛隊三部作」の第三弾、海自編。もう一方の主役は、自衛隊の出動を既定のものとしつつも、だらだらと判断を先延ばしにする政府首脳の前に、絶望的ともいえる戦いを強いられる警察組織。陸自の火力さえあれば簡単に片が付くものに、だらだらと時間だけがかけられる。そして子供たちを抱え込んで救助を待つ潜水艦もまた、閉鎖環境の中で精神をすり減らす15人。
終わってみれば、後悔だけが残る、絶望的な戦いが繰り広げられます。
外伝が「クジラの彼」に收録されていますので、併せて読むと楽しみも倍です。