著者: 橋本紡
レーベル: 新潮社
父親が家出してきたとき、奈緒子は実家の玄関でしか寝れない体だった。一年半前に死んだ恋人の加地君を思い出して、忘れられなくて、彼の匂いの染み付いたところから逃げ出して、玄関。父親はなにやら母と喧嘩をしてきたらしい。まったりと流れていく時間のなか、加地君の親友で今カレの巧もまた、忘れられない加地との思い出と、加地の彼女を横取りした自責に浸っていた……。
忘れられない想い、拭い去れない思い出と、譲れないもの。愛するが故の苦しみは、いつか大切なものに変わる。
徹底的に橋本紡作品です。ライトノベルレーベルではありませんし、主人公達の年齢は高目ですが、歳を食ってても苦しいものは苦しいし、辛いものは辛いし、悲しいものは悲しい。泣いても笑っても死んだ人は生き返らなくて、残された者たちだけが彷徨い歩く。
それでも最後には、前向きに進んでいけるのが、橋本作品です。
文庫版の解説は重松清氏が担当しています。