著者: 田代裕彦
イラストレータ: 睦月ムンク
レーベル: 富士見ミステリー文庫
「ミステリー」と銘打っておきながら、ミステリーらしいミステリーが殆どないと言われる富士見ミステリー文庫の中で、正統派の密室推理小説を貫ぬこうとしているシリーズ。
時は大正12年、探偵作家・平井骸惚の押しかけ弟子の帝大生・河上太一が、事件に巻込まれては解決しようと右往左往し、しかし最後には必ず骸惚先生が颯爽と謎を解くという、王道推理小説。ややトリックに難がある気がするのが、富士見ミステリーにそこまで求めても仕方ない。
骸惚先生の二人の娘、涼と潑子とのラブコメもあって、ライトノベルとしての体裁も充分。
ただ惜しむらくは、大正12年という設定。ご存知の通り、大正12年の9月には関東大震災が発生するため、これを避けて物語を進めることができない。もしもこれを物語に組み込むならば、相当な力量を要求されるだろう。
などと書いていましたが、其四で関東大震災を舞台に避難所という“クローズド・サークル”での殺人事件を見せてくれました。ややご都合主義的なところがないでもないですが、とうとう河上太一君が名探偵役を完遂します。今後もこの路線を続けていって欲しいものです。
などと書いていましたが、其伍で完結です。後書き読んで、なるほど、と思いました。