著者: 橋本紡
イラストレータ: 山本ケイジ
レーベル: 電撃文庫
急性肝炎で入院した裕一が病院で出会った長期入院の少女・里香は、恐ろしくワガママで癇癪持ちで毎日のように裕一を振り回す。病院にはやけに態度が悪い里香の主治医・夏目や、元チーマーの看護婦・亜希子さん、それにとても死にそうにないスケベ老人多田さんなど、個性的な面々がずらり。
永遠に続く休日のような入院生活。しかし裕一は知ってしまう。里香は心臓を病んでいて、手術しても成功率は低く、放っておいても近い将来死んでしまうことを。
一度だけしかない、本当の青春の季節に、二人は出会った。
三重県伊勢市を舞台に命短し恋せよ若人とばかりに暴走する青春活劇で、時々見せる年長組の過去なども、実に効果的。終わりが見えているから燃え上がる想いもあるし、終わりがないから続けられる恋もある。友情もあるし恋もあるし幼馴染の秘めた想いも揃ってます。
時折挿入されるプロレス話がやけに微細を穿っておりますが、その辺もニヤりと笑えるクオリティです。
作中では明らかになっていませんが、多分里香の病名は拡張型心筋症ではないでしょうかね。とすると、夏目医師の行う手術はバチスタということになるのですが……市立病院くらいでそんな手術するなよ。
最終巻に描かれる日常が、切ないです。いつか終わる“平凡な”日常が、淡々と過ぎていくのが、本当に切なかった。
2010年に大幅加筆修正の元、『完全版半分の月がのぼる空』が一般文芸として発売予定。