著者: 葉山透
イラストレータ: 睦月れい
レーベル: 富士見ミステリー文庫
重病の妹を救うため、古代遺跡の遺跡に入り美術工芸品を回収するハンターとなり、金に糸目を付けずに仕事を請ける凄腕として鳴らしていたルークは、妹の回復と共にハンターをやめ、故郷で大工見習いとして人生の再出発を切っていた。
しかし赤髪の美女がハンターとしてのルークを訪ねてきたところから事情がおかしくなりはじめ、ルークが大工として修復に関っていた「神の門」を舞台とした密室殺人未遂事件に遭遇することに。
果たしてルークは妹の彼氏に掛けられた嫌疑を晴らし、「神の門」の謎を解くことができるのか―。
SFミステリーなら珍しくないが、ファンタジーミステリーというのは数少ない。なぜ少ないかが、このシリーズではよく分かる。
ミステリーの条件「ノックスの十戒」では読者の知らない情報によって解決してはいけないとあるが、空想世界を舞台とするファンタジーでは、世界中に読者の知らない情報が蔓延しているわけで、本格ミステリーを仕立てるのは不可能ではないにしろ、極めて困難なのだ。
富士見ミステリー文庫の初期作品の一つとして、第1回ヤングミステリー大賞最終候補作ではあるものの、本格ミステリーだと思って読んではいけない作品。あくまで“ミステリーっぽい感じのファンタジー”として読むのが正解だろう。
その点を弁えれば、ルークとレイリアという二人の男女の掛け合い漫才付き道中記ファンタジー風味として、そこそこ楽しめる作品ではある。