著者: 水落晴美
イラストレータ: 狐印
レーベル: 電撃文庫
願い事が叶うという「空曜日」が4月31日と11月31日に書き込まれたカレンダー。女の子たちを中心に流行するそのカレンダーは、他愛もないおまじないのはずだった。
高校2年生になったばかりの坂上真人は、ある夜コンビニのバイトで美少女二人組に出会い、その直後、二人が道で自動車に轢かれるのを目撃する。慌てて救急車を呼んだ真人だったが、現場には怪我人はおろか、血痕すら残されていなかった。
そして週明けの月曜日、真人は学校でその二人に再会する。風見葵と小賀玉茜と名乗った二人のうち、快活な葵の方とお付きあいすることに。一年年下のはずなのに、時に年上のようにも見える不思議な葵と付きあうなかで、真人は「ここならぬ場所」「あわい」の気配を感じるようになる。
祖父の家で葵そっくりの「人形」が写った50年前の写真を見た真人の前に、人形を求める男が姿をあらわし、周囲を取り巻く全ての不自然さが「4月31日」の空曜日に向かって收束していく。
一言で言い表すのがとても難しい作品です。作品に込められている要素やエピソードが多く普通なら破綻してしまいかねない程なのですが、そこを上手く纏めているとことは評価できます。ただ、こう言ってはなんですが、巧い作家さんであればこの作品で使われたネタを使って長編が三本は書けるでしょう。
それぞれの理由によって現実世界から遊離してしまい、足場を失いつつある少年少女たちの、不安と恐れと日常への執着とがよく書き表されていると思います。