著者: 米澤穂信
装画: フジモト・ヒデト
レーベル: 新潮社
恋人・諏訪ノゾミが三年前に死んだ東尋坊へ来ていた嵯峨野リョウは、足を滑らせ……気がつくと金沢の浅野川ほとりのベンチにいた。家に戻るとそこには見知らぬ女性が居て、自分を嵯峨野サキだと言った。ここは、リョウがおらず、リョウがいた世界では生まれてこなかったサキがいる世界だった。
その世界では、諏訪ノゾミが生きていた。
パラレルワールドものなのですが、引き裂くような痛ましさがあります。自分が存在しない世界。自分の代わりに生まれてこなかった“姉”が存在している世界。その世界では、元の世界でリョウが諦めていた数々の物事が、姉の力によって解決している。
自分の存在とは何なのか。
リョウの別れの言葉が、胸を突きます。