著者: 半田克己
イラストレータ: 八房龍之助
レーベル: 電撃文庫
ドレクスラー分子工学研究所で開発されていた分子機械〈ナノ虫〉が、実験中に制御を離れ、暴走を始める。鉄とカルシウムをあらゆる物質から拔き出し、再構築する〈ナノ虫〉は、人体をも分解してしまう。
見学中に研究施設内に取り残された伊奈丘高校化学部のメンバー三人を救うべく、あらゆる手立てが講じられるが、〈ナノ虫〉たちの圧倒的な増殖力がこれを阻む。
最終手段は、X線照射による〈ナノ虫〉の焼却。しかしそれを行えば、閉じ込められた三人の命もない。刻々とタイムリミットが迫る極限状態の中、研究者たちと高校生が死力を尽くして分子機械に戦いを挑む、パニック・ノベル。
パニック・ノベルとして充分なスリルを味わえる一冊。分子機械の動作が余りにも擬虫化されているなど、SFとしてはどうかと思われる面もあるが、あくまでライトノベルだと割り切ればよいだろう。極限状態に置かれたキャラクターたちの、剥き出しの感情のぶつかりあいが、真に迫っていて、実に読ませる。
ところでこの作者は、この作品がデビュー作で、その後全く作品を発表していない。なんとももったいないことだ。