著者: 中村幌
イラストレータ: 水上カオリ
レーベル: コバルト文庫
1947年、第二次大戦後の内戦に搖れる東地中海の小国スヴァディアに独り暮らすラタ・リンデルはある日、隣国・エクセニアの女性武官の訪問を受ける。彼女は幼馴染の双子の姉妹の妹・エーファからの手紙をラタに渡し、エーファの死を告げる。そして、姉・クラウディアを救うためにエクセニアに来て欲しいと依頼した。
一度は断ったラタだったが、スヴァディア内務省に追われる形でエクセニア行きを余儀なくされる。護衛のマッジとの道中で、姉妹との最後の日々、1941年の夏を思い出しながら―
2004年度コバルト・ロマン大賞入選作。
デビュー作ということもあってか、粗削りな所も隨所に見られるが、第二次大戦とその後の東西冷戦前期を舞台に、当時のトピックの一つでもある暗号技術に絡んだ政治模様を描いている。それでいてライトノベルらしくキャラクターにも焦点がきちんと当たっているところが秀逸。ミリタリーものなどでは決して珍しい題材ではないが、これをライトノベルでやったところを評価したい。