著者: 木ノ歌詠
イラストレータ: ミヤスリサ
レーベル: 富士見ミステリー文庫
18歳の誕生日を迎えると同時に、全身の細胞が壊死して死亡する〈死の六連譜〉に蝕まれる階名春希は、海上音楽都市アド・リビトゥムで最後の冬を迎えていた。かつて作曲家を目指しながらも、〈死の六連譜〉によって無気力に陥っていた春希は、師である庭瀬敏之の死に際して、奇妙な成り行きから彼の娘・庭瀬伽音と同居生活を送ることに。
「わたしは、次世代フォルマント・シンギング音源――お父さんが開発した、最後の歌詞入力型シンセサイザーです」
自らを人型シンセサイザーだと言い張る伽音との交流のなかで、全てを諦めきっていた春希の心の中に、灯るものが生まれる。今生きている春希が、最後に残された時間を費やして求めるものは――
デビュー作らしく色々詰め込んでありますが、ギリギリの線でバランスを保っています。何より作者の音楽への拘りが溢れていて、うんちくですら読ませます。ただ、いささかSF考証については甘いところがありますが、その辺は目を瞑りましょう。
他は全部すっ飛ばして、とりあえず春希と伽音の交流と心の変化を楽しむのが良い読み方だと思います。